冷間タップ加工現場で、頭部やフランジの縁、あるいはR角に亀裂が見つかると、多くの人はまず材料や冷間タップ用金型を確認したくなります。
しかし、完成品に現れる欠陥の位置は、多くの場合、最終的にその欠陥が表面化した場所にすぎず、必ずしも最初に発生した場所ではありません。
一部の欠陥は連続鋳造や圧延の段階で生じ、別のものは輸送や荷役の過程で発生し、さらに一部は酸洗浄、引き抜き加工、ライン通過、送材、切断の各工程で新たに生じるものです。
表面欠陥は上流工程から引き継がれることもあれば、中間工程で新たに発生することもあります。冷間タップ加工は欠陥の形状を変えますが、すでに損傷した材料の連続性を回復することはできません。
欠陥の経路:連続鋳造スラブ → 圧延線材(コイル)→ 輸送・荷役 → 酸洗改質 → 引き抜き・ライン通過 → 冷間タップ成形
一、連鋳段階:欠陥は鋼材の表層直下から発生する可能性がある
鋼材は線材の出発点です。異常な振痕や皮下気孔、夾渣、結疤、くぼみなどは、いずれもその後の表面欠陥の原因となり得ます。

図1 連鋳鋼材の異常な振痕。通常の浅い振痕は必ずしも欠陥ではありませんが、振痕が異常に深くなったり、根元に亀裂や夾渣を伴う場合には、その後のリスクが顕著に高まります。

図2 研磨後に露呈した皮下気孔。圧延後には気孔が押し潰されることもあれば、圧延方向に引き伸ばされる場合もあります。内部壁面の酸化状態によって、その後の確実な溶着の可否が左右されます。

図3 鋼材表面または近表面における夾渣。スラグ相は鋼基体と協調して変形しないため、圧延後に破砕・延伸し、結疤や折り返し、あるいは線状の欠陥へと進展することがあります。

図4 鋼材表面の結疤。薄片状の金属付着物は、その後の圧延工程で薄く押し広げられ、母材内へ巻き込まれる場合があります。表面は一見平滑に見えても、内部の界面結合が十分でないことがあります。

図5 鋼材表面の凹み。「凹み」とは外観上の形状を指す表現であり、具体的な発生要因は、坑底の酸化物、縁部の反転状態、周囲の亀裂などを総合的に評価することで判断します。
鋼材表面の欠陥は、圧延過程において押しつぶされたり、引き伸ばされたり、進行方向を変えたりすることがあります。見た目が平滑になったとしても、元々存在していた材料の不連続性が消えたことを意味するわけではありません。
二、圧延段階:欠陥は引き伸ばされる場合もあれば、新たに生じる場合もある
鋼材の鋳塊内部に存在する亀裂が、線材の縦方向の亀裂へと発展することがあります。また、結疤や夾渣(きょうさ)は圧延によって薄く引き延ばされ、断続的な線状の異常として現れることがあります。さらに、皮下気孔も不連続な線状の異常を形成することがあります。
圧延工程そのものでも欠陥が生じる可能性があります。ロール溝への充填不良やガイド装置、ロール間隙の異常により耳状物が発生し、これが次のロールで材料表面に押し戻されることで折り返しが生じます。酸化スケールや異物が母材内部に押し込まれると、局所的な不連続部が残ることもあります。

図6 折り返し欠陥の断面図。表層金属が舌状に巻き込まれており、界面では確実な結合が形成されていません。表面が一時的に閉じていても、内部の欠陥が解消されたことを意味するわけではありません。

図7 線材表面の結疤。通常の傷とは異なり、結疤には片状の付着物や局所的な縁のはがれ、剥離痕が見られるのが特徴です。

図8 線材表面亀裂の断面図。図示の亀裂は表面から母材内部へと進展しています。酸化や脱炭、異常組織の有無については、さらなる分析が必要です。
折り返しと亀裂は外観上似ていることがありますが、発生メカニズムは異なります。折り返しは一部の金属が巻き込まれたまま確実な結合が得られていない状態であり、亀裂は母材の連続性がすでに破断している状態です。両者の原因追跡は単純に混同してはなりません。
三、輸送・搬送:接触による擦り傷が割れの起点となることもある
コイルは吊り上げ、巻き取り、積み重ね、輸送などの過程で衝突や滑り、相互摩擦が生じ、擦り傷や凹み、金属のめくれなどが発生することがあります。これらの損傷は通常局所的かつランダムに発生し、コイルの外周部や吊り具との接触箇所に集中しやすい傾向があります。

図9 輸送や搬送時に生じた擦れ傷。その方向や位置は必ずしも一定ではなく、線引き金型による連続した縦方向の傷とは異なる特徴があります。
一般的な加工度の製品であれば、軽微な損傷がすぐに異常を引き起こすとは限りませんが、高加工度や複雑な形状を持つ製品、あるいは薄いフランジ部品などでは、損傷部がひずみ集中点となり、冷間鍛造工程で拡大されるおそれがあります。
四、酸洗工程:欠陥を露見させると同時に、潜在的な問題を残す可能性も
酸洗によって酸化皮膜が除去されると、これまで覆われていた亀裂や折り返し、結節、くぼみなどが徐々に現れてきます。そのため、酸洗後に欠陥が見つかったとしても、それが必ずしも酸洗工程で生じたものとは限りません。
酸化皮膜が十分に取り除かれていない場合、残留する酸化物がリン酸塩皮膜の均一な形成を妨げ、引き抜き加工中に破砕・剥落したり、鋼線表面へ押し込まれたりすることがあります。

図10 酸洗後の酸化皮膜残留。濃い色の縦方向の帯状部分は、折り返しや亀裂内部に残った酸化物と区別する必要があり、単に色だけで判断してはなりません。
酸洗条件の管理が不適切だと、点食や表面粗さが発生することもあります。問題が元来存在していた欠陥が露出したのか、それとも酸洗工程で新たに生じたものなのかを判断するためには、酸洗前後の試料を保存して比較検討する必要があります。
五、改製引き抜き加工:見落とされがちな新たな欠陥である縦方向の引っ掻き傷
改製工程では、材料の寸法を変えるだけでなく、鋼線表面そのものを直接損傷してしまうこともあります。
引き抜きダイスの摩耗、ダイス孔内への酸化皮膜や金属片の混入、潤滑膜の一時的な機能低下、さらにガイドローラーや誘導部品のバリや異常接触などにより、連続的または断続的な縦方向の引っ掻き傷が生じることがあります。

図11 改製引き抜き加工によって生じた局所的な引っ掻き傷。欠陥は鋼線の長手方向に分布し、溝の形成や金属のめくれ上がり、部分的な剥離などを伴います。
短距離にわたる偶発的な引っ掻き傷については、硬質異物の混入や瞬間的な粘着、局所的な接触に注目すべきです。一方、円周方向の位置が比較的一定で長距離にわたり連続的に現れる場合は、引き抜きダイスやガイドローラー、通過箇所のチェックを重点的に行う必要があります。
ただし、縦方向の痕跡は必ずしも引き抜き加工に起因するわけではありません。圧延過程で生じた亀裂や折り返し、酸洗後に残った酸化皮膜などが引き抜き加工を経ることで、同様の外観を呈することがあります。本当に確認すべきことは、その欠陥が引き抜き工程に入る前にすでに存在していたのか、それとも特定のダイスや通過箇所以降に初めて出現したものなのか、という点です。
本章では、引き抜き加工によって生じた表面損傷についてのみ取り上げます。減面率や引き抜き道数、加工硬化が冷間鍛造性能に与える影響については、第六章で改めて詳しく説明します。
六、冷間鍛造工程の前段階:最後の新規欠陥はしばしば見落とされます
材料が冷間鍛造機に投入されてから、正式な成形が始まるまでの間に、新たな表面損傷が生じる可能性があります。過線ローラーや矯正装置、送材機構などが鋼線表面を擦って傷つけたり、切断刃や切断金型の摩耗・欠け・バリによって、半製品の端面や側面が損傷したりすることがあります。
欠陥が常に一定の方向・一定の位置に現れる場合、あるいは過線ローラーや切断刃を交換した後に顕著な変化が見られる場合には、材料証明書や元の線材だけを再確認するだけでは不十分です。
7. なぜ欠陥は完成品まで「遺伝」してしまうのか?
引き抜き加工では材料が長手方向に延伸し、冷間鍛造では軸方向の圧縮と径方向の流動が生じます。元々存在した欠陥は引き延ばされたり圧縮されて細くなったり、一時的に閉じることもありますが、材料の流れに伴って頭部やフランジ、R角へ移動し、変形の大きい領域で再び開くこともあります。

図12 冷間鍛造品のフランジ端部の亀裂。写真は欠陥が最終的に現れた箇所を示しており、外観だけから材料由来だと断定することはできません。
線材に存在する縦方向の欠陥は、完成品に至ったときには必ずしも当初の直線状の形状を保っているわけではありません。頭部のエッジクラック、フランジの折れ込み、R角のひび割れ、あるいは局所的な凹みといった形で現れることがあり、その具体的な位置は製品の構造や切断方向、材料の流れの経路によって異なります。
欠陥は完成品に単純にコピーされるのではなく、各工程で形状を変えながら存続していくのです。
8. 欠陥の発生源を特定する鍵は、「最初に出現した場所」を見つけること
最終的な破損部のみを調べるだけでは、欠陥がどの工程で生じたのかを判断するのは困難です。より効果的な調査方法は、鋼スラブ、コイル棒、酸洗後の材料、引き抜きによる半製品、冷間鍛造用のブランク、そして完成品という一連のサンプルチェーンを追跡し、欠陥が初めて現れた工程を探ることです。
異常はコイルの特定の一区間に集中しているのか、それとも全巻にわたって連続して現れているのか。欠陥の方向や円周上の位置は一定しているか。金型やガイドローラー、切断刃を交換した後に変化はあるか。亀裂内部に酸化・脱炭や異常な金属流線が見られるか。これらはすべて調査の手がかりとなりますが、工程記録と結びつけずに単独で用いることはできません。
エンジニアの視点
表面欠陥は、連続鋳造、圧延、輸送、酸洗い、改質引き抜きなどさまざまな段階で生じる可能性があります。また、冷間鍛造機におけるガイドローラーや送り機構、切断工程でも発生しうるものです。
完成品のどこで亀裂が生じたかが、そのまま欠陥の発生場所であることを意味するわけではありません。
完成品の欠陥は結果であり、欠陥が最初に現れた工程を見つけ出してはじめて、本当の起点に迫ることができるのです。
欠陥の原因究明の目的は、まず責任の所在を決めることではなく、工程全体にわたる完全な証拠の連鎖を構築することにあります。
もし貴社でもコイル棒の結節、縦方向の傷、折れ込み、あるいは冷間鍛造時の偶発的な亀裂といった問題に直面されているのであれば、材料のグレードや規格、欠陥の写真、発生した工程、異常の分布状況などをご提供ください。まずは鋼材の原料や輸送時の保護対策、酸洗・改質のプロセス、あるいは冷間鍛造設備のいずれから調査を始めるべきか、お手伝いいたします。
次回予告
第6章:『同じ材料でも、引き抜き加工を経た後、冷間鍛造での挙動が異なるのはなぜか?』
次回は、減面率や引き抜きの道数、加工硬化などが、材料が冷間鍛造機に投入される時点での実際の状態にどのような影響を与えるのかについて詳しく解説します。
